(志免町は福岡市に隣接する町で、私もこの町の町民です)
地下で採掘した石炭を、地下から地上まで巻き上げるための施設です。
現在はもちろん利用されていません。
上部は1スパン分オーバーハングしています。下のバリケードのすぐ上には、コンクリート製の庇が設けられ、上から吊る斜材が見えています。
庇の正面から見ると、反対側もオーバーハングしています。
トップヘビーの形態が、視覚的なアンバランス危うさを増幅し、力強い形態を強調しています。
コンクリート表面はクラック(ひび割れ)や爆裂(錆びた鉄筋の露出)だらけで痛々しい姿をさらしています。皮肉なことに歴史を刻んだテクスチャーがこの造形の存在感を増しています。
躯体に蔦が張り付いています。生命体の血管のようにも見えます。しかし、寄生され必死に耐えているようにも見えます。
柱の主筋が露出しているところが、さらに痛々しく見えます。
数年前に総合福祉センターが整備されました。
数百メートルの深さに新鮮な空気を送っていた換気口です。レンガを4重にアーチに積層して造っています。
人間の鼻のように2又に分かれています。流体力学を生命体に学んだのでしょうか。
鼻の上から見た状況。そっくりではないでしょうか。
鼻の内部。美しいレンガアーチと、下りていく階段が見えます。当時のデジカメは能力がこの程度で残念です。
2重のプロペラが残っていました。
プロペラは木製です。この炭坑は海軍の炭坑で、鉄が不足していたのでしょうか。それとも、プロペラは軽量化のため、当時は木が最適な材料だったのかも知れません。
残念ながら、この換気口は現在は残されていません。道路工事のため解体され埋められてしまいました。本当に残念です。奥に立坑が見えます。
産業考古学的な価値もさることながら、意匠をそぎ落とした機能美と時を刻み込んだ表面のテクスチャー、その圧倒的な存在感は、残す価値ある遺産として大切に保存して欲しいと思います。
蔦がからむ夏の立坑全景。
躯体に蔦が張り付く。「生命体の血管のようにも見える冬」に比べると美しいのですが・・・。