400床(1200食/日)の病院厨房の設計監理し、竣工しました。
業務用厨房は、調理機器が大きく数も多く、調理機器から大量の熱が発生するので、通常のように、天井に空調機(エアコン)を設置しても、なかなかうまくいきませんし、極めて非効率です。
理由1.
天井付近の暖められた空気を、天井空調機(天井エアコン)で吸い込んで冷やしても効率が悪く、気温が高すぎると空調器が自動停止したり、蒸気を多く含むので、専用の厨房用空調機(業務厨房用エアコン)でなければ故障しやすい。
理由2.
本来、調理機器の蒸気や廃熱が、真っ直ぐに立ち上がり、天井の換気扇に吸われて排出すべきところだが天井空調機の吹き出し口から吹き出す気流により、かき混ぜられ、調理機器の熱や蒸気がすぐに室外へ排出されない。
理由3.
排出されない蒸気や廃熱により、厨房全体の気温が下がらず、空調機の能力を上げて無理に下げようとしても極めて効率が悪く、うまく気温が下がらない上、空調コストが増大する。
そのため、やむを得ず、部屋を冷やすことは二の次にして調理師に空調機から冷気を当てるスポット空調に頼る例が殆ど。
従来のこの方法は、調理室の気温が高くなるので、衛生状態の点でマイナス要因でもある。
そこで.
天井に空調機は設置せずに、床上すぐの高さの壁面から冷気・新鮮空気を室内に供給する。
調理で暖められた空気は上に行くので、人の居る高さ(居住域)は涼しく、上に行くにしたがい高温になるという、温度別の空気層が出来る。
調理室の空気を、空調機などでかき混ぜないので、調理機器から出る蒸気と熱は、真っ直ぐに天井の換気扇に向かい、屋外へ排出される。
換気扇フードに捉えられなかった廃熱は、天井付近に一時的に滞留するが、フードの立下りを小さくしているので、そのうち屋外に排出されることになる。
これは、計画段階から、建築計画と、空調設備計画換気設備計画、厨房機器の配置計画 厨房機器のディテール、及び全ての取合調整など、これらをコンセプトに基づいて設計することで、はじめて設計することができた。
また、施工段階では、コンセプトを施工者に説明し理解したうえで工事を進めることにより実現することができた。