2016年9月30日金曜日

出版されて、半年以上経過したのですが、「菊竹学校」が建築画報社から出版されました。
建築家 菊竹清訓は、多くの建築家を育てましたが、その先輩方々が、どのように建築を学んだか、建築家菊竹清訓に師事した時の思い出について書いた書籍です。
私も、少し書かせていただきました。
以下は、パンフレットのURL
http://www.jia.or.jp/resources/news_files/000/515/0000162/R9D1nvhj.pdf





2016年9月27日火曜日

効率的な空調の病院厨房が竣工しました

400床(1200食/日)の病院厨房の設計監理し、竣工しました。
業務用厨房は、調理機器が大きく数も多く、調理機器から大量の熱が発生するので、通常のように、天井に空調機(エアコン)を設置しても、なかなかうまくいきませんし、極めて非効率です。

理由1.
天井付近の暖められた空気を、天井空調機(天井エアコン)で吸い込んで冷やしても効率が悪く、気温が高すぎると空調器が自動停止したり、蒸気を多く含むので、専用の厨房用空調機(業務厨房用エアコン)でなければ故障しやすい。

理由2.
本来、調理機器の蒸気や廃熱が、真っ直ぐに立ち上がり、天井の換気扇に吸われて排出すべきところだが天井空調機の吹き出し口から吹き出す気流により、かき混ぜられ、調理機器の熱や蒸気がすぐに室外へ排出されない。


理由3.
排出されない蒸気や廃熱により、厨房全体の気温が下がらず、空調機の能力を上げて無理に下げようとしても極めて効率が悪く、うまく気温が下がらない上、空調コストが増大する。
そのため、やむを得ず、部屋を冷やすことは二の次にして調理師に空調機から冷気を当てるスポット空調に頼る例が殆ど。


従来のこの方法は、調理室の気温が高くなるので、衛生状態の点でマイナス要因でもある。



そこで.
天井に空調機は設置せずに、床上すぐの高さの壁面から冷気・新鮮空気を室内に供給する。
調理で暖められた空気は上に行くので、人の居る高さ(居住域)は涼しく、上に行くにしたがい高温になるという、温度別の空気層が出来る。

調理室の空気を、空調機などでかき混ぜないので、調理機器から出る蒸気と熱は、真っ直ぐに天井の換気扇に向かい、屋外へ排出される。

換気扇フードに捉えられなかった廃熱は、天井付近に一時的に滞留するが、フードの立下りを小さくしているので、そのうち屋外に排出されることになる。


これは、計画段階から、建築計画と、空調設備計画換気設備計画、厨房機器の配置計画 厨房機器のディテール、及び全ての取合調整など、これらをコンセプトに基づいて設計することで、はじめて設計することができた。
また、施工段階では、コンセプトを施工者に説明し理解したうえで工事を進めることにより実現することができた。

2016年8月30日火曜日

熊本城の被害状況と復興の足取り

熊本城に行ってきました。
主な目的は、「奇跡の石垣」と言われた建物の応急工事を見るためでした。
多くは報道されていない被害の大きさに驚き、状況を紹介したいとともに、現在は、城内を見学することが可能で、見学者でにぎわっていることを伝えたいと思います。皆さんが、熊本に行くことが復興のために役立ちます。
熊本市役所より。休日も解放されています。(H28.8月現在)

報道で紹介された「飯田丸五階櫓」。主目的としては、これを見学に来ました。
奥から屋根越しのキャンティレバー構造で崩落しそうな部分を下から支えています。
左下から支えることが危険という判断によるものでしょう。




奥は、天守閣。瓦が落ちていますが、遠くなので、よく解りません。
瓦を除けば、変形や傾きなど、外観上の大きな被害はここからは確認できません。



重要文化財の東十八間櫓(ブルーシートの個所に在った)
が、石積みと共に崩落しています。



入り口附近の馬具櫓。直下の石積みが崩落しています。
ここから、桜馬場の中を通って、階段を上って徒歩5分で
二の丸広場に着きます。桜馬場と二の丸広場を往復
する、無料シャトルバスも運行しています。
元気な方は、階段がお勧め。




入り口付近にある、桜馬場のお土産屋さんや観光案内所。
案内ボランティアの受け付けもここで出来ます。
私は、お願いしませんでしたが、聞き耳を立てていると、
解りやすく、お勧めで、次回はお願いしようと思います。

たまたま、この写真には人が少ないですが、お客さんで賑わっていました。
歌のイベントも開催していました。


未申櫓。南から見ると被害は確認できませんが・・・・



未申櫓、北西側の石積みが崩落しています。

二の丸広場から大小天守閣(中央と右)、宇土櫓(左)を見る。
手前の石積みの上に在った、回廊が向こう側に倒れています。
この部分の上部の石積みは昭和45~50年に復元されたものです。
この石積みの北側(写真左側)の続きが下の写真です。

 
完全に崩落しています。
この石積みの北側(写真左側)の続きが下の写真、 戌亥櫓(いぬいやぐら)。


戌亥櫓はかろうじて、崩壊を免れていますが、石積みは大きく崩れ、飯田丸五階櫓と同様に隅石で支えられています。この櫓の右(南)と左(東)の石積みは完全に崩落しています。



戌亥櫓を北東側から見る。


北大手門跡の西側。戌亥櫓まで石積みが崩落。


同じく北大手門跡の東側。石積みが崩落。



              
北大手門跡から、西大手門を見る。東側の石積みが崩壊。


最後に、宇土櫓と奥の大小天守を見る。
特に、重要文化財の宇土櫓は外観上は健在です。
あまり被害が見えず、少し、ほっとするアングルです。
二の丸広場の入り口から、ゆっくり歩いてここまで、
15~20分くらい。加藤神社も参拝できます。

今回は、飯田丸五階櫓の応急工事を見学に来たのですが、報道では石積みの被害が伝えきれておらず、その被害の大きさに驚きました。
建築の内部に入ることはできませんが、元々、私は復元された建築内部よりは、配置計画・石積み、そしてこれらの中に建つ建築の外観と構成が美しいのであって、これらは充分に見学可能であり、是非、見学に行くべきだと思います。それが、復興につながります。

文化財である石積みの上に、建築を再建もしくは復元することの難しさを痛感しました。これについては、後日、書きたいと思います。

                                                                                    シード建築設計事務所  種生

2016年8月11日木曜日

いろいろな部位の温度を測ってみた


晴天の日、いろいろな部位の温度を測ってみました。

外気温:35度
黒い車のボンネット:71.1度  
この場合、色の差はあまり関係なさそう。
きっと、目玉焼きができますね。







車の中の、窓越しの直射日光が当たらない座席シートの表面温度は、車内の気温とほぼ同じです。
車内気温:61.8度
車は、車内の容積に対してガラスの面積が大きく、建築よりも熱貫流率が高いので、急速に車内の気温が上昇します。
ちょっとの間でも子供や動物を車内に残すのはやめましょう。








自宅の前の、水深30センチメートルくらいの川の表面温度。
30.8度
下流の関で水が溜められていて、流れはありません。
夕方の測定







翌日の午前8時ごろの川の表面を温度。27.4度







南中時刻(この時期、福岡では12時25分くらい)の、南面コンクリート外壁の表面温度
44.9度
建築の外壁には十分な断熱材が必要になります。






同じく南側外壁。サイディングボードの表面温度:49.9度
熱容量がコンクリートより小さく、温度が上がりやすいため、コンクリートより高温度になっています。熱容量が小さい分、夜になって気温が下がれば、コンクリートよりも早めに表面温度も下がります。
通気工法ですが、ボードの内側の通気の温度も同じくらいの温度でしょう。






太陽が真西に位置する時、西側コンクリート外壁の表面温度51.5度 照射角度が直角に近いので温度が高い。
夏の西日の負荷が大きいはずですよね。






朝8時過ぎのアスファルト道路の温度:36.2度
少しでも涼しい朝の散歩。犬はアスファルトに近いので、辛いはずですよね。







昼過ぎのアスファルト道路:55.6度







ウッドデッキ、イペ材の表面の温度:66.2度
熱くて裸足で上がれない位の温度になります。







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