2007年8月26日日曜日

太陽の動き日影の動き

住宅のインテリアや庭を計画するうえで、また、光が重要な建築の計画において、建築自体による影が、一日の中でまた季節によって、どのように動くかの検討は建築の設計において避けて通るわけにはいきません。
建築による日影はどのように動くのでしょうか。太陽はどのように動くかは、義務教育で習ったので、その反対に影が出来るのですが、実際の建築のスケールにあてはめでみると、なかなか興味深いと思います。
図1~3は高さが約9m程度の3階建ての住宅の影がどのように出来るかを示しています。(福岡で計算)季節ごとの同時刻の日影。上から冬至、夏至、彼岸。
冬至の日影
夏至の日影

彼岸の日影






冬至の影


冬至の日影


これは冬至の影を、日の出の頃から日没のころまでを1時間おきに示しています。
冬至の影は1日中北側に長い影が出来ます。常に北側に影が出来るという点では、一日中あまり変化が無い影の出来かたと言えるでしょう。近隣の敷地に最も影響を及ぼすので、建築基準法でも日照の問題を規定する部分では、冬至の影を基準としており、確認申請に添付されるのはこの図です。







夏至の影

夏至の日影


これは夏至の日の建築の影を、日の出の頃から日没のころまでを1時間おきに示しています。夏至の影は建築の設計では通常は書きませんが、とても面白い影です。太陽がかなり北寄りから昇るために、朝の9時までは太陽は(東西軸の)北側にあり、南側に影が出来ます。9時から午後3時までは、東西軸のほぼ真上の空を東から西に動き、その間は、南の壁面にはあまり光が当たらず、壁に低い角度でしかあたらない。
午後3時ごろ、太陽はほぼ真西にあり、その後は北側にまわる。1日を通して北側に大きな影が出来ることはない。4時間以上日影になる部分は建物の周囲のごくわずかの範囲。つまり、北側の壁面の間近以外には充分に日照が得られる。建物の北庭でも充分、夏野菜が出来そうです。
1日の光の動きとしては、北東側から当たっていた光が、東の空に昇りそれから南の上に行き、昼過ぎに真西、さらに北側にまわるという、変化のある動きを見せてくれます。






お彼岸の影

お彼岸の日影


これは春と秋の彼岸の頃の影を、日の出の頃から日没のころまでを示しています。真東から昇り、真西に沈むので、北側の影の先端の軌跡が直線になります。
3つを比較してみると、季節により驚くほどの違いがあることがわかります。3つの図とも、グレーに塗りつぶしている部分は午後3時の影で、1つの時間をとってみても季節によりこれだけの違いがあることが解ります。
季節により太陽高度が変わることは解っていていても、その他にも随分興味深いことが沢山あることがわかり、建築計画に取り入れることが出来そうです。


これは昔、学校で習った太陽の1日の動きを示しています。影の原因、太陽の動きを再確認してみましょう。
右側の図は立った状態で西から東側を眺めている様を示しています。
福岡県 福岡市は 33°35'N 130°24'E  なので、太陽高度はどの程度かというと、緯度が33.5度の福岡の場合、夏至の南中時刻の太陽高度は
90-33.5+23.4=79.9度
夏は実にほぼ真上から日が差していることがわかる。(右図の一番左の軌跡)
冬至の南中時刻の太陽高度は
90-33.5-23.4=33.1度
冬はとても横から日が差していることがわかる。(右図の一番右の軌跡)
夏には天球のほぼ真上を通っているのに、冬にはこんなに端っこしか動いてないことが解ります。
参考までに、春分秋分の頃は(右図の中央の軌跡)
90-33.5=56.5度
このあたりは、建築でも基礎なので、日本の建築の庇は夏の日差しを遮り、冬は光を室内まで取り込むように計画されているのは常識。

では、太陽は本当に東から昇って西に沈んでいるのか?
左の図は地図を見るように、天球の上から地面を見ています。これを見ると、
夏至の太陽は東ではなく、さらに30度ほど(南を0度とすると、-118度くらい)も北側に振れた位置から昇り、東西対称の位置に沈みます。つまり「東から昇って西に沈んでいる」というのは随分な巾があるといえます。
そんな言葉尻をとらえて・・・と言われるかもしれませんが、建築計画には重要な意味を持っています。
夏の太陽は朝と夕方は、かなり北側まで回っている。
では何時ごろ真西を通っているのかというと、朝は9時ごろ真東、午後は15時頃に真西にあります。そのため、午後3時以降もまだまだ、じりじりと照りつけ、日没まで4時間以上も照らし続けるのです。しかも沈む前の太陽なので、高度が低く建築の西側の壁に大きい角度で当たるので、熱負荷が大きくなります。夏の西日がきつい訳です。
真西を過ぎると、北側に太陽が振れるので、敷地の両隣に遮る物が無い場合、北側の壁面や北側の庭にも充分に光が回ります。1日を見ても夏至の頃は太陽が南側にある時間より、北側にある時間の方が長いのです。
そして、南側の壁面について言えば、夏の太陽は南側の壁面にはあまり負荷を与えてない。南側にある窓から直射日光を遮るには1m程度の庇があれば充分ということになります。

春分と秋分は真東から昇って真西に沈むので、4月から8月ごろまでは北側にも光が当たり、特に5~7月には近隣の条件によっては、北側でも充分な直射日光が得られることがわかります。高さ5mの建築で影の長さは0.9m程度です。
だから、3つの庭がある家の屋上の芝生は全面緑色です(コンクリート壁の真北の直下も)。
北庭の家:建物を敷地の南に寄せ、北庭とした住宅。
庭には直射日光が必要-庭のはなし



これらは、福岡で計算していますので、他の地域では多少の違いがあります。
また、上記の時間は全て真太陽時であり、実際の時間とは季節によって数分から数十分の差があります。これについては、「真太陽時」で検索すると詳しいページがたくさんあります。
国立天文台 天文情報センター
http://www.nao.ac.jp/koyomi/
などは、地域別の今日のこよみを調べることが出来るので便利です。


よろしければ会社のホームページもご覧ください。
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シード建築設計事務所


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